消えぬ戦火 プロローグ part2

 巨大な立体ホログラムモニタが目まぐるしく映像を映し出す。そのどれもが忌々しき虫ケラ共を映し出していた。
「敵の詳細は?」
「敵、インセクター群は現在東京湾を北上中。このままの進路だと、およそ10分で東京湾第一海軍基地に到達する見込み。その後約5分で帝都外周防壁に接触します。」
管制官が状況を伝える。
「敵の目的は恐らく…」
私がそう言いかけたとき。
「ロンギヌス。」
茶の長髪をボサボサにした坂本博士が司令室に入ってきて、開口一番にそう言った。彼は風呂の時間も惜しんで研究に没頭する、凄腕の科学者だ。
「奴等はロンギヌスが目当てだ。そりゃあそうだ。あれだけ堂々と建造中なのだからな。」
誰もが同じ予想をしていたのだが、この博士は自慢げに語る。
「では、ロンギヌスまでの予想侵攻ルートに防衛線を張れ。」
毎度変わらぬ指示を出していると、博士が何か思い出したように、
「奥松司令、それともう一つ…」
「何だ。」
「今回の敵は今までと何かが違う。さっきから嫌な予感がする。それを忠告しに来たんだ。」
司令室に緊張が走る。博士の忠告など、これまでに例が無い。
「分かった。念の為、空軍にも協力を要請しよう。」
「頼んだよ、司令。」
さて、これからはいつもの流れと変わらない。
「全防壁、全砲台を展開!」
「了解。帝都外周、及び帝都第一から第三の全格納防壁、展開します!」
「続いて一〇式展開砲台、展開!」
管制官の声と共に、街が鋼鉄の城と化す。まるで、街がこれまで眠っていたかのように。そう、これが本当の帝都の姿なのだ。