消えぬ戦火 プロローグ part1

 今日は帝都は平和である。だがそんな平和に浮かれてはいられない。2015年にインセクターが襲来してからというもの、人類は防戦一方だった。大日本帝国も国土の約4分の3が焦土と化し、人々は中枢都市を要塞化して生き長らえている。しかし、我々もやられるばかりでは終われない。各国では日夜、対抗兵器の研究が行われており、その最先端で働く俺達には、一時の平和を享受する暇も与えられない。
 アタッシェケースを抱え、基地へ繋がる道を歩く。研究所から徒歩一分の場所に、帝都防衛の要、対インセクター特殊撃滅軍本部がある。こんなに近いのだから通路で繋いでしまえばいいのに、なんて思いながら網目状の空を見上げたその時。
「第一級災害警報が発令されました。市民の皆様は速やかに近くのシェルターに避難してください。繰り返します。第一級災害警報が発令されました―」
聞き慣れた警報と機械質の声が響き渡る。街中のLEDが青から赤に切り替わり、一気に物々しい雰囲気に変わった。
「こんな時にお出ましか…。ならば尚更急がないと。」
本来なら老朽化した高速道路を見上げながら物思いにふける道だが、今はそれどころではなかった。